Nov 16, 2004

School of Rock

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(ややはしょりすぎのあらすじ)
規律の厳しい名門私立小学校にもぐりこんだニセ教師(ジャック・
ブラック)が、生徒たちにロック魂を注入して、バンドをやらせる話。

前評判があまりにも良かったので、色々と思うところがありました。
ストーリーは安直だがぎりぎり楽しめる、ってところかなー。

個性的な生徒たちのなかに、もう少し悲しみの芽を内包してるような
子がいたりしたら、もっと濃淡のあるぐっとスパイシーな話になってい
ただろうなーと思うと惜しい。(よけいなお世話だが。)
たとえば「天使にラブソングを」のローリン・ヒルみたいな存在が。

ジャック・ブラックという人は本当に素晴らしくキュート。
歌声もその存在感も。繊細で、愛らしい。
とっても好きです。
最後のエンドロールのときのひらきっぱなしのセッションみたいなのが
よかったな〜。
こんな親戚のおじさんがひとり欲しい、今日この頃。

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Aug 28, 2004

DOGVILLE

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ドッグヴィル DOGVILLE

『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のラース・フォン・トリアー監督。
山あいの廃坑のある村に、ギャングに追われて逃げ込んできた女、
グレース(ニコールキットマン)。

村びとたちはグレースをかくまい、グレースは一旦村の人々に受け入れ
られたかに見えたが……。

楡の樹など一本もない、白線でELM.stと書かれた村のメインストリートは
100メートルほどしかない。
舞台のような空間に白い線でバミられた小さく、粗末な村の家々。
壁や屋根はなく、まるで不動産の見取り図のように表現されている。
机や椅子、ベッドなどと共に家の中は丸見えになっていて、
お互いを監視しているようなさがない視線の中で暮らしている。
ドアなどないのに、ノックをして、空のドアを開けて交わる人々。

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May 26, 2004

PUNCH-DRUNK LOVE

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PUNCH-DRUNK LOVE パンチドランク・ラブ

晴れた平日の午後、なぜかひとり映画館に来てしまった。
郊外の小さな映画館。
外はピカピカのお天気だというのに、館内はひやりとしている。
まばらな人影。持ち込んだサンドイッチを頬張りながら、
ポール・トーマス・アンダーソン監督特集の二本立てを観る。

一本は『マグノリア』だ。
『マグノリア』は別れた恋人と観た。
映画を観た後、大喧嘩をして、そしてしばらくして別れてしまったのだ。
彼はベルツノガエルというカエルを飼っていたが、そのことと、大喧嘩と
『マグノリア』との相関関係はなかったと思う。もう忘れてしまったが。

さて、パンチドランク・ラブ。
アダム・サンドラーのお芝居を観るためのお話のようにも思えるし、
あらすじにしてしまうと他愛のない物語のようである。

家族(特に姉たち)にスポイルされた変わり者の主人公(アダム・サンドラー)が、
恋をして、ぐっと恋におちて、ピカピカに輝く話。

たぶん忘れてしまう。
だけど、いくつかの忘れ物がわたしの中に残された。
彼の着ていた青いスーツと、ハーモニウムという小さな鍵盤楽器と、プリンと、
上のジャケットにもある二人がシルエットになったキスシーン。

落書きみたいに残された、綺麗な色のシーン。

それとあれだ、なんか落っことすのが好きですね、この監督は。
ちゃぶ台みたいに、世界をひっくり返すヤツ。笑っちゃう。

(マグノリアとパンチドランク・ラブの二本立ての映画が上映されている
 映画館がきっと世界のどこかにあると思います。たぶん。あったらいいな。)

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May 12, 2004

Matchstick Men

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マッチスティックメン リドリー・スコット監督

ニコラス・ケイジ扮する潔癖性の天才詐欺アーティスト。14年前に別れた妻との間に
娘がいると聞かされ、晴天の霹靂ながら、初めて対面した娘のペースに巻き込まれ人生
が動き出すが……。
詐欺師の相棒をサム・ロックウェルがいつもの調子で好演。
ネタバレなしに観てこその価値。

潔癖性の主人公の住む塵一つない美しい部屋はいつもカーテンで閉ざされているが、
窓から見える陽の当たる中庭のプールの照り返しは美しく、輝く。
薬が切れたときに見える歪んだコマ送りの映像が危うい世界の破片のように散らばる。
リドリースコット監督の色彩が美しい始まりの数十分から、ストーリィの仕掛けに
はめられてゆく自然な流れが楽しい。
娘役のアリソン・ローマンもとってもキュート。ガーリィな魅力たっぷり。

先入観無しに観ないと損かな。
わたしはとっても好きでした。
ニコラス・ケイジも変質的で素敵です。


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May 07, 2004

わたくしの好き好きNO.1俳優

クリストファー・ウォーケンが大好きです。
最近では「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」で、ディカプリオさんのお父さん
役を、渋く、下品に演じていました。ご覧になった方も多いのでは?

最初の出合いは先日書いた記憶再生装置の話「ブレインストーム」でした。
それからこの「デッドゾーン」、そして「ディア・ハンター」…という順番に衝撃的な
作品群で彼に引き込まれ、「007 美しき獲物たち」でノックアウト状態となり、
ショーン・ペンと共演した「ロンリーブラッド」でちょっとショックを受けて、
「パルプフィクション」へと続く流れ。

その他にもたまにちょい役でつまんない映画に変な役で出てたりして、
なんだか浮き沈みの激しい感じが。

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「デッドゾーン」はスティーブン・キング原作、デビット・クローネンバーグ監督。

事故による長い昏睡の間に婚約者は去り、奇跡的に覚醒した主人公には予知能力が。
新しい人生を歩む彼は自分の不思議な能力にとまどいながら、哀しい運命を受け入れ
孤独な戦いを。ひっそりと純粋な愛を全うしようとする。
美しいお話です。映画としてもかなり完成度が高いと思います。

やがて大統領になるであろう政治家役をマーティン・シーンが演じているのですが、
彼は最近TV映画ホワイトハウスで正義の大統領役を演じているので、デッドゾーン
での役柄と対比して重ねると大変おもしろい広がりを感じます。
この役のマーティン・シーンもイイんですよね〜。

冷酷顔の二枚目はイイです。儚くて。

役者というのは不思議な商売で、色々な人生を演じることで脆く不安定な足場で生き
ているのではないだろうかと、想像させます。
ディアハンターでの自らの命でロシアンルーレットをするベトナム帰還兵の精神の
崩壊もしかり、たくさんの役柄の魂を全部引き受けて生きているように見えてしまう。
顔が役をキャスティングさせるのか、演じた役が顔を作るのか。

この人の微笑みにはいつでも「あきらめ」のようなものが漂っていて、
影が染み付いている典型的な役者さんだと思います。

せつない微笑みが、ぐっと心をわしづかみ。
だまされやすい女です。


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Apr 15, 2004

DEATH TO SMOOCHY

DEATH TO SMOOCHY デス・トゥ・スムーチー
主演:エドワード・ノートン ロビン・ウイリアムズ

ミュージカルみたいです。悪い意味で…(笑)。

盛者の驕りで金まみれになり主役を追われた子供番組の人気キャラクターレインボー
ランドルフの中の人(ロビン・ウイリアムズ)。彼に変わり新しく抜てきされたピンク
のサイの着ぐるみSMOOCHY(エドワード・ノートン)に仕事も恋人も奪われ逆ギレ、
激しく嫌がらせをするが…。
アイリッシュマフィア、謎の黒幕、TVディレクターなどが、利権を巡って暗躍する。
菜食主義のカバの運命やいかに!

どうせ勧善懲悪に帰結するのに、改心する人を中途半端に救い上げてみたりして、
それが物語に深みを与えるどころか御都合主義に。
愛すべき悪、許されうる悪と、撃ち殺していい悪をどうやって区別?
結局自分の都合かよ…。偽善…。
この手のアメリカの善悪の判断基準のセンスがぜんぜんわからない…。
これでオッケーだとリリースする人の気持ちがわからなーい。

スパイシーでもブラッキーでもなく、教訓を授けるつもりもなさそう。
その上エンターテイメントとして一流ってわけでもない。
下品さも中途半端。笑えるわけでもないし。

出演者につられて観ると損する一本。

スパイダーマン、バットマン、そーいうノリなのか…。
101匹わんちゃんとか。アメコミの失敗したやつ、ということか。

オースティンパワーズみたいなのを期待したのが間違いだった。
エドワード・ノートンの育ちのよさそうな笑顔が、唯一の救い。

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Apr 10, 2004

真夜中の洗脳

深夜のTVが終わった後に、NHKなんかで風景や動物の映像を流している事が
あります。何かの調整のための映像なのでしょうか。
マングローブの川面を舟で渡って行く景色だったり、たくさんの種類の羊がどん
どん丸刈りにされゆく様だったり、水族館で泳ぐペンギンとか海亀だったり。
パリのカフェでくつろぐ人々だったり、朝市の様子だったり。

思わず魅入ってしまう無意味かつ美しい映像です。

先日わたしが心ひかれた映像は、東京MXTVのものです。

この局はFC東京の中継を筆頭に石原都知事の会見、真面目にふざけて裏番組の
視聴率の推移を生中継する番組(これはもう終わったのかな)その他かなり不
思議な番組構成をしている局なのですが、今日は夜中の映像の話。

果てしない平原です。真ん中に一応アスファルトで舗装されたと思しき一本の道。
陽炎がゆらゆらとたちのぼっているところから見ると、とても暑い場所のようです。
視界にさえぎるものは何一つありません。乾いた大地です。干涸びた土に、申しわけ
程度に茶色く枯れた背の低い草がところどころ生えています。

陽炎に歪む地平線から赤いシャツを着た少年がやってきます。
羊を従えて。30〜40頭程いるでしょうか。

少年はそこらへんで拾ったような30センチほどの細い枝を振っています。
だからといって羊を追い立てているわけではありません。
ただ一緒に歩いているだけです。
のんびり、というよりは少し早い速度です。bpm100くらい。

少年と羊は横に広がりながら、うねうねと道をはみだしながらこちらへ
向かってやってきます。

陽炎のせいで、鋪装された道路は濡れたように所々光っていますが、雨はこの一週間、
一滴も落ちてこない。(たぶん)

と、少年と羊の背後に赤いトラックがやってきました。
大きな、背の高いトラックです。
運転席は二階の屋根ほどありそうです。太い腕が運転席の窓から覗いています。
…見えませんが、もちろんtattooも入っているでしょう。

少年が振り返る。
運転手と挨拶をかわすわけでもなく、また、今まで通りに歩き出します。
赤いトラックはジリジリと徐行。
あ、止まった。

羊たちは道を譲るつもりはないらしい。
少年も羊を退かせるつもりはないらしい。
陽炎が包む。
赤いトラック。羊。少年。

…ここまでですでに5分以上経っています。
この後いったいどうなるんだ?

運転手はどのくらいまでなら我慢できるでしょう。
イライラが頂点に達した運転手がクラクションを鳴らすかもしれない。
暴走するトラック。
驚いて逃げ惑う羊たち。
かまわずアクセルを踏むバラの入れ墨の男。
埃まみれのアスファルトなぎ倒された白い雲と赤いバラのような鮮血。
助けて!この子を助けてください!

…はっ。この映像には何か仕込まれてるのかもしれない。
BGMのインストゥルメンタルか。この曲も怪しい。
頭が空っぽになってしまいました。
空は白み始めている。カラスが遠くで「ぐぎゃー」と言いました。

しばらくして、ゆるやかに、しかたなさそうに羊たちは道を譲りました。
トラックも慌てることもなく、少年に中指を突き立てる事もなく、ゆっくりと追いこ
し過ぎ去っていきました。

羊と少年は今日もまた、目的の場所まで歩いているのでしょう。


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Apr 06, 2004

THE MAN FROM ELYSIAN FIELDS

THE MAN FROM ELYSIAN FIELDS  エゴイスト 
幸せな家庭を持つ売れない小説家(アンディ・ガルシア)が高級出張ホストのバイト
で知り合った客は、小説家の大家(ジェームズ・コバーン)の奥さんだった。
歳をとって余命幾許もない彼の最後の小説を共同でリライトするが…。

お話は途中から読めてしまう展開でしたが、予想していたより、悪者率の低い話し
に仕上がっていた。言い換えれば毒にも薬にも…。
アンディ・ガルシアが落ち着いたインテリ役。彼をスカウトする出張ホスト派遣会社
の社長にミック・ジャガー…。ミイラ盗りがミイラになる人の役を、ある意味熱演。
ミックジャガーの存在感がこの映画の毒か。

ERシリーズでキャロルを演じていたアンジェリカ・ヒューストンが、アンディガルシ
アの奥さん役。髪型もつながり眉毛も全く変わっていなかった。何の役をやっていて
も、看護士キャロルに見えてしまうから怖いですね、ERって。

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Mar 26, 2004

My Big Fat Greek Wedding

My Big Fat Greek Wedding
マイ・ビッグ・ファット・ウェディング

ギリシャ系移民一家の次女で冴えない三十路女である主人公が、大ファミリーの慣習
の古めかしさを乗り越えて新しい自分を獲得し、恋人をゲット。結婚に至るまでの苦
難の道のりを、愛と笑いとホロリで綴る爆笑ラブコメ。

トムハンクスがプロデューサーに名を連ねてるんですね〜。これ。
実話を元に映画化したと聞いた覚えがあります。

お話は本当に楽しくて何度も大笑いしてしまいました。脇役の一人一人が本当に素晴
らしいキャラクターばかり。お父さん、お母さんはもちろん、結婚相手の両親、叔母
さん、弟、みんな素敵なんだけど、ファミリーの女達のたくましい生命力が爆発して、
姦しさここに極まれり。男をとことん愛し、抱きしめ、時に操る賢さも頼もしい。
すべてのエピソードが大切に折り込まれている、素晴らしい脚本だと思いました。

日本では最近希薄になった親戚縁者で寄り添い身を立て、風を避け、育み、愛し
あう、おせっかいの嵐。ラテン系のパワー炸裂。
「人間は 一人ぼっちで 生きてない」
「家族という 単位ありきで 始まった」
そんな、根本に立ち還らせてくれるお話。親の愛の深さも。

…反面に横たわるあの親戚付き合いってやつのわずらわしさ、押し付けがましさ、
世代間ギャップの恐ろしい溝、等々のデメリットについてはしばし考えないフリ
をして、楽しもう!(笑)

観てしばらく元気が持続する、思い出してニコニコしちゃう作品です。

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Mar 24, 2004

The Life of David Gale

The Life of David Gale(ライフ・オブ・デビット・ゲイル)
死刑廃止論者である大学教授(ケビン・スペイシー)は、レイプと殺人事件の犯人とし
て死刑囚となる。冤罪を訴える彼に女性記者が彼にインタビューのチャンスを与えられ
るが、死刑は四日後。

彼は殺したのか?それとも?

ケビン・スペイシーが主演ということは「いやらしい」映画に違いないと、やる気満々
で観始めた。女性記者役がちょっと下世話なブロンド、ボブのおねいさんだったので少
しB級の雰囲気を醸し出していて、「これはサスペンスタッチの推理モン?」又は、
「フィルム全体の色彩は、冤罪、人権問題を扱ったアート系?」などと迷いながら探り
ながら観ていました。
途中「カウボーイハット」がわざとらしくしかけられてたりして、サイコサスペンス
スリラーの匂いも立ちこめはじめて、とっちらかっていく。
ケビン・スペイシーの頬にあるニ本の筋が、別の意味で無気味さを押し付けてくる。
話の筋としては、最後に色々どんでん返しがあっておもしろいんだけど、この映画、
もっとさらっとした人が主人公を演じた方が話の輪郭がくっきりしてすっきりしたよ
うな気もする。それでもって、女性記者役をジョディ・フォスターみたいな存在感の
ある人が演じたらどうかなぁ。それじゃあ羊たちの沈黙みたいか(笑)。

…ま、この作品はケビン・スペイシーのためのケビン・スペイシーの映画です。
好きなひとにはたまらない、凶悪顔。わたしも堪能しました。

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