未来世紀5thランナー
新宿の果てしなく猥雑な喧噪を抜け店に入ると、
そこは大切なモノを守り育むためにできた小さなパティオの
ような格好で、六帖程のステージを取り囲む客席は満席である。
ステージに置かれた椅子は八脚。
ダンサー4人とギタリスト2人歌い手2人の合計8人。
入れ替わりながら踊り、歌う。
カンテのスキンヘッドの男がこのショーを仕切っているのだろう。
未来から降り立ったような不思議な存在感を持つ人だ。
素晴らしい声をしている。
耳にはシルバーのピアスが光る。この男だけがある程度の年配で、
他のメンバーは20代前半から30くらいまで。
若いが皆ある水準に達する芸を身につけている。
トーキョーのスペイン料理屋で毎日ショーに出ている、という、
地の果てに辿り着いた人の緩さはない。
若く、強く、真摯な踊り手、歌い手、弾き手だ。
バルセロナ出身の若いバイレの踊りが満場の注目を浴びる。
客の視線はかなり厳しいように思う。
青年は美しく、踊りは真摯なものであったが、包容力のようなもの、
なによりフラメンコに重要な「色気」がまだ決定的に足りない。
蜂蜜のように黄金に輝くとろみ、のようなものが。
それで最後のメンバー紹介では、スキンヘッドのボスに賞賛の拍手が偏った。
彼の声と、所作、そして存在への敬意の拍手。
舞台とは厳しい場所である。
遠い遠い東の果ての酒場で踊る人よ。
半年後バルセロナに帰る時、何を想うのか。
未来世紀ブラジル+フィフス・エレメント+ブレードランナーのような、
懐かしいSFの香りのする夜でした。
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